GoogleはAI検索を導入してから検索される回数が増えた、と説明しています。一方で、ブログの検索流入や広告収益については「むしろ減っている」と感じる運営者もいます。両者は矛盾するのでしょうか。
結論は、矛盾しません。Googleで検索する回数が増えても、外部サイトへのクリック率が低下すれば、ブログの訪問数は伸びない可能性があります。そしてGoogleの検索広告売上と、ブログが受け取るAdSense収益はそもそも別の指標です。
この記事では2026年10月28日公表のAlphabet決算、検索行動の調査、Google公式のSearch Console説明を照合し、「検索される」「クリックされる」「広告収益になる」という3段階を整理します。2026年10月30日時点の情報です。
結論:Google検索の利用増加は、ブログ流入の回復を意味しない
Alphabetの2026年第3四半期決算資料によると、Google検索クエリの「前年同期比の伸び率」は過去5年間で最も高い水準となりました。AI関連機能によって、商品・サービスを探す商業的な検索も増えているとGoogleは説明しています。
ただし、検索クエリの総数や具体的な成長率は開示されていません。「検索する人の数が5年で最高」でも、「ブログへの訪問者が5年で最高」でもありません。1人がAI Modeで繰り返し質問することも、検索回数には関係します。
GoogleのCEO決算説明では、AI Modeのクエリは従来検索の平均約3倍の長さで、世界のAI Mode検索の約5件に1件が音声・画像・文書を使うとしています。検索行動の形そのものが変わりつつあります。
この記事で区別する3つのズレ:①Google内の検索クエリ数とブログの訪問数、②Google検索広告の売上とブログの広告収益、③検索結果での表示回数と実際に記事が読まれた回数。
2026年決算で見る「検索回数・広告売上・広告クリック」の違い
まず、Google Search & other(Google検索および関連プロパティ)の2026年の推移を見ます。下表の「成長率」「有料広告クリック」「平均クリック単価」は、すべて各四半期の前年同期比です。直前期から売上が何%増えたかを表しているわけではありません。
| 指標(前年同期比) | 2026 Q1 | 2026 Q2 | 2026 Q3 |
|---|---|---|---|
| Google Search & other売上 | +19% | +17% | +12% |
| 有料広告クリック数 | +13% | +13% | +8% |
| 平均広告クリック単価(CPC) | +5% | +3% | +4% |
Google Search & otherの売上はQ3で633億5,000万ドルとなり、前年同期の565億6,700万ドルから約12%増えました。一方、Q2の632億7,100万ドルとはほぼ横ばいです。売上「金額」は減っていないものの、前年同期に対する「伸び率」は19%→17%→12%へ鈍化しています。
ここでいう「有料広告クリック」とは、Google検索やGmail、GoogleマップなどGoogle側の広告を利用者がクリックした回数です。通常の検索結果からブログに入ってきたクリックではありません。同じ「クリック」でも測っている行動が違います。
検索回数からブログ収益までの関係図
検索クエリが増えた後、どの行動につながるかでGoogleとブログへの影響は分かれます。以下は指標の関係を簡略化した図です。
Googleが開示する「検索クエリ」の話
→ Google Search & otherの広告売上につながる
※検索広告等の指標→ ブログへ訪問 → 広告表示・閲覧 → ブログ収益の機会
※広告単価・表示率などでも変動→ ブログへの訪問なし → その検索ではブログPVが増えない
※AIの有無によらず起こり得る仮に検索が100回から120回に増えても、外部サイトのリンクがクリックされる割合が20%から10%に下がれば、訪問数は20回から12回に減ります。これは仕組みを説明するための仮定の数字であり、Googleが発表した実測値ではありません。
AI検索が伸びてもGoogleの売上成長率が鈍化した理由
「検索回数が増えたのに売上の伸び率が鈍化した=AI検索がGoogleの広告を壊した」と断定するのは早計です。決算説明会で経営陣は複数の要因を挙げています。
- 為替変動:Q2からQ3にかけた成長率鈍化を説明する最大の要因として言及。
- 広告主・業種の変化:小売などの動向や、前四半期のスポーツイベントに関わる広告需要の反動。
- AI Modeの収益化:AI Modeの検索利用は伸びているものの、従来型の検索より広告収益化が低い状況が影響したとの説明。
2026年10月28日にはGoogleがAI Modeへの広告展開を新たに10か国で進めること、米国では追加質問の途中にも広告を表示する「マルチターン広告」を導入することを公表しました。収益化を改善しようとする動きは確かにあります。
ただし、AI Mode単独の広告売上、1検索当たりの収益額、従来検索との厳密な収益比率は公表されていません。したがって、成長率鈍化のうちAI Modeの影響が何%を占めたかは分かりません。
検索結果を見てもサイトを開かない「ゼロクリック化」は進んだのか
ブログ運営者にとって、Googleの売上より直接関係が深いのは、検索結果から自サイトへ人が来るかどうかです。独立した調査には、AIによる概要が表示される検索で外部サイトへのクリックが少ない傾向が見られます。
Pew:米国の閲覧行動では8%対15%
Pew Research Centerの2025年7月の分析は、米国の成人900人が共有した同年3月の閲覧データを分析しました。AIによる概要が表示された検索ページでは通常の検索結果リンクをクリックした割合が8%、概要がない検索ページでは15%でした。AI概要そのもののリンクがクリックされた割合は1%でした。
検索者が使った検索語や知りたい内容が同じとは限らず、このデータは観察研究です。AI概要がクリック減少の唯一の原因だと証明したものではありません。
Ahrefs:日本の情報収集キーワードでは推計比−62.7%
Ahrefsが2026年7月に公開した日本向け分析では、AI概要が表示される情報収集型キーワードについて、検索順位1位のCTR(検索結果が表示された際にクリックされる割合)を比較しています。2026年6月の実測CTRは9.0%、AI概要がなかった場合の推計CTRは24.1%で、推計に対する下落率は約62.7%でした。
「日本の全ブログでアクセスが62.7%減少した」という意味ではありません。対象は情報収集型キーワードの1位のCTRであり、推計との比較です。
| 調査 | 分かること | そのまま言えないこと |
|---|---|---|
| Pew/米国・2025年3月 | AI概要あり:通常結果クリック8%、なし:15% | AI概要だけがクリック減少を引き起こしたという因果関係 |
| Ahrefs/日本・2026年6月 | 情報収集型検索1位で、推計CTR比−62.7% | すべての検索やサイトでクリックが62.7%減ったこと |
検索の答えが結果画面に十分載っていれば、あえて記事を開かない利用者がいても不思議ではありません。一方で、比較条件の確認、購入前のレビュー、実測データ、原典の確認など、サイトを訪問する必要が残る検索もあります。記事の価値は検索意図によって変わります。
Googleの検索広告売上とブログのAdSense収益は別物

収益の話をする場合はGoogleが開示する事業区分に注意が必要です。Google Search & otherは検索等の広告収益で、Google NetworkはAdSense、AdMob、Google Ad Managerなどを含むネットワーク側の広告収益です。
| 対象 | 数字の意味 | 自分のブログ収益との関係 |
|---|---|---|
| Google Search & other | Google検索と関連プロパティの広告売上 | ブログのAdSense売上そのものではない |
| Google Network | AdSense・AdMobなどを含む広告ネットワーク売上 | ブログ関連の事業を含むが、個々の収益は表さない |
| Search Consoleの検索クリック | 検索結果から自サイトへ来たクリック | 流入の観測に使う。収益そのものではない |
| 自サイトのAdSense収益 | 自サイトが受け取る広告収益 | 実際の収益を直接確認する指標 |
実際、2026年Q3のGoogle Network売上は前年の73億5,400万ドルから74億5,500万ドルへ、約1.4%増えました。しかし、同じ10-Qの説明ではAdMobの増収が主因で、AdSense売上は減少したと明記されています。Googleの広告事業全体が伸びていても、ブログ側が恩恵を受けるとは限らないことが分かります。
ブログ収益は、流入数だけでなく広告の表示機会、表示率、閲覧ページ数、広告需要、国や端末、広告単価などで変わります。例えば同じ訪問数でも、訪問者が読むページ数や広告単価が変われば収益は変動します。決算数値から自サイトの収益を直接推計することはできません。
Search ConsoleでAI検索への露出とクリックをどう追う?
Googleは2026年8月31日までに、Search Consoleの生成AIパフォーマンスレポートを世界のサイトに展開したと案内しています。AI Overviews(AIによる概要)やAI Modeで自サイトのリンクが表示された回数、表示されたページ、国、端末などを把握するための機能です。
ただし、現時点の専用レポートは主に表示回数を扱い、AI検索だけのクリック数やCTRを独立表示するものではありません。表示回数が一定水準に満たない場合など、レポート自体が見えないこともあります。
毎月チェックする数字を4つに分ける
- AIへの露出:生成AIパフォーマンスレポートでページ別・国別・端末別の表示回数を確認。
- 通常の検索実績:Search Consoleの検索パフォーマンスでクリック、表示回数、CTR、掲載順位の推移を確認。
- サイト内の行動:GA4でGoogleの自然検索からのセッションやエンゲージメントを確認。Search ConsoleのクリックとGA4のセッションは定義が異なり、一致しない。
- 広告収益:AdSenseでページRPM(1,000ページビュー当たりの推定収益)、推定収益、広告表示関連指標を確認。
前年同期と直近90日を比較し、記事単位で数字を並べます。例えば「検索表示回数は維持/CTRだけ低下/セッションが減少」という順に見ると、順位や検索需要だけでなく、クリックに至る段階の変化が疑えます。ただし同時期の検索結果仕様、順位変動、季節性、競合記事も確認し、AIだけの影響と決めつけないことが重要です。
実務の判断例:検索表示回数と順位はおおむね横ばいなのにCTRが低下した場合、まず該当検索語の結果画面を確認する。AI概要、広告枠、強調スニペット、検索意図の変化を調べ、本文やタイトルの改稿が有効か検討する。
これからのSEOで変えること・変えなくてよいこと
Googleは生成AI検索向けの公式SEOガイドで、既存のSEOの基本策はAI検索でも有効だと明言しています。無理に「AI専用SEO」へ切り替えるより、読者が記事を開く理由を増やす方が先です。
- 追加する価値:一次資料の比較、実測・検証、購入後の変化、調査条件、更新履歴など、AIの短い要約では確認しにくい内容を用意する。
- 維持する基本:明快な見出し、内部リンク、クロール可能なHTML、信頼できる出典、分かりやすい図表を整える。
- 急がなくてよい対策:Google検索を目的としたllms.txtの設置や、AI向けの不自然な文章分割を必須だと考えない。
- 慎重に扱う設定:AI検索機能からの表示を除外する設定は、AI検索での表示機会も失うため、影響を理解してから判断する。
AI検索への掲載可否についてはSearch Console公式の制御設定説明に案内があります。「AIに情報を使わせない」ことと「検索流入を守る」ことは同義ではありません。除外したらアクセスが増えると期待する根拠はありません。
今後の決算・SEO変化で追うべきこと
次の四半期決算ではGoogle Search & otherの成長率、Paid clicksとCPC、Google Network内のAdSenseに関する説明、AI Mode広告の収益化について確認したいところです。同時に、自サイトではクリック・CTR・GA4の流入・AdSense収益の4つを継続比較します。
「Google検索の利用は増えたのに、自分のブログは伸びない」という状態は十分に起こり得ます。だからこそ、Google全体の数字ではなく、自サイトの読者が検索結果から記事を開く必要があるかを考え、観測することが今のSEOの現実的な一歩です。
よくある疑問
AI検索が増えたらGoogle検索はなくなりますか?
2026年Q3決算だけから、そのようには言えません。GoogleはAI機能を含む検索クエリの伸びが過去5年で最高だったと説明しています。一方、従来検索とAI Modeの利用内訳や、将来の推移は十分には開示していません。
検索順位が変わらないのにアクセスだけ減ることはありますか?
あります。検索結果画面で答えが得られる、広告やAI概要などの表示で自然検索リンクが押し下げられる、検索する人の目的が変化する、といった理由でCTRが動くことがあります。ただし、サイト別の原因はSearch Consoleのページ・クエリ別データと検索結果の実画面を見て判断します。
生成AIパフォーマンスレポートが見つからないのは異常ですか?
必ずしも異常ではありません。Googleは、生成AI機能での表示回数が少ないサイトではレポートが出ない場合があると説明しています。サイトがAI検索機能に掲載される設定かどうかも確認してください。
参考資料・出典
- Alphabet 2026 Q3 決算リリース(2026年10月28日)
- Alphabet 2026 Q3 Form 10-Q(SEC提出書類)
- Alphabet 2026 Q1 Form 10-Q/Q2 Form 10-Q
- Google CEO 決算説明(2026年10月28日)
- Pew Research Center 検索行動調査(2025年7月22日)
- Ahrefs 日本のAI概要とCTR分析(2026年7月21日)
- Google Search Console 生成AIパフォーマンスレポート
- Google 検索セントラル AI検索向けSEOガイド
編集注:本記事は公開資料と外部調査に基づく解説です。Googleの検索クエリ総数、AI Mode単独売上、AI検索が自然検索流入に与えた因果的な影響の大きさは、この決算からは分かりません。記事中の数値は公表資料の対象時期・定義に限定して読んでください。



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